せらぴんブログ

サークル「せらぴん」のうのはな透です。やっぱり眼鏡っ娘が好き!!

「空前の伊達眼鏡ブーム」は大正ではなく明治のものだった?

5/18(日)、横浜マリネリアで開催された艦これオンリー「グランドフリート!」に参加してまいりました。当日は既刊・新刊共に多くの方に手にとっていただき、とても充実した時間を過ごせました。ありがとうございます!

さてその新刊「眼鏡は艤装に入りますか?」ですが、冒頭でこんなやりとりがあります。

霧島「私達が就役したのはいつ?」
榛名「えっと――大正四年」
霧島「そう――大正時代 そして大正時代といえば……」
榛名・提督「大正時代といえば――?!」

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こうは言っちゃいるが、果たして「空前の伊達眼鏡ブーム」は実在したのでしょうか?

きっかけは「委員長、西へ」

メガネっ娘居酒屋「委員長」OFFICIALWEB | メガネっ娘居酒屋「委員長」公式サイト

この件に関する二次ソースは、4/26(土)に開催された「メガネっ娘居酒屋『委員長』2014  委員長、西へ」夜の部の「おおまか眼鏡史・日本編」です。磨伸映一郎先生が日本国内の眼鏡にまつわる動勢をまとめて発表したものですが、その中で「明治時代の眼鏡ブームを受け、大正時代には視力が高い者も眼鏡を掛け始めた」という言及があったわけであります。

↑発表当時のpostがこちら。

一次ソースは「奇態流行史」

ジョージポットマンの平成史:美女メガネ史 - めがねのひみつ

近代デジタルライブラリー - 奇態流行史

さてはてでは一次ソースはいかに?と思い調べてみると、ありました。大正11年に発行された「奇態流行史」が原典のようです。

奇態流行史は江戸時代~大正時代までの奇妙な流行をまとめた書籍です。「コツクリ様という遊戯」「大酒大食の自慢会」といった現代でも通じそうなものや、「とんだ茶釜が薬缶に化けた」と一見すると妖怪か?みたいなもの*1まであります。

この奇態流行史の89Pに「蜻蛉よろしくの大眼鏡」という章がありまして、ここで伊達眼鏡に関して以下のとおり記載してあります。

眼鏡は近視眼又は老眼の者が、補助の必要上、掛くべき物であるに、いつしか肉眼に何等の欠点なき者までが掛ける事になった、それは虚栄のために素通しの金縁眼鏡を掛けて威張るとか、勉学読書のために近視眼に成ったらしく装うなどであるが、其連中に一時大きな眼鏡を掛ける事が流行した。

明治二十二年九月発行の『流行新聞』に「近頃はベラボウに大きな眼鏡を掛ける事が流行り出し、蜻蛉の眼玉もよろしくであるが、追っては易者の天眼鏡を潰して一層大きなものを拵へる者も出るであらうか」とある、斯かる大眼鏡は此後にも間欠的に流行した

要するに「伊達眼鏡を掛ける者が出始めただけでなく、そいつらが殊更大きな眼鏡を掛け始めた」という内容です。この内容から直ちに「空前の伊達眼鏡ブームは実在したんだ!」と導くのはいささか暴論かもしれませんが、書籍に載るくらいですから注目はされていたんだと思います。

ただし書籍の構成上*2、この章は“明治22年前後に起こった現象”について記録しているようなので、伊達眼鏡ブームが起こったのは大正ではなく明治前半期ではないかと思われます。

この点に関して、調査不足から弊著に誤った内容を記載してしまったこと、この場を借りてお詫び申し上げます。

眼鏡が流行したのは女高師ではなく女子大学

弊著でもう一点ミスがありました。下記の表現です。

神田は御茶ノ水を往けば十人中十一人が眼鏡を掛けていたと言われているわ!!

ここは「当時の女学校といえば東京女子高等師範学校(東京女高師)だろう」という発想でお茶の水にしたわけですが、文献上眼鏡が流行ったのは東京女高師ではなく日本女子大学でした。
これは、眼鏡史でよく引き合いに出される「ハイカラ節」の歌詞が

♫「ゴールド眼鏡のハイカラは
都の西の目白台 女子大学の女学生♫

となっていることからも明らかです。ですのでここの場面でのセリフは

都の西の目白台を往けば十人中十一人が眼鏡を掛けていたと言われているわ!!

とするべきでした。重ねてお詫び申し上げます。

弊著修正に関して

以上、二点の誤謬がありましたため、再販時には下記点修正する予定です。

  • 下記注釈を入れる。「『空前の伊達眼鏡ブーム』は大正時代に起こったものではなく、正確には明治前期に起こったものが断続的に続いていたものです」
  • セリフを差し替える。「都の西の目白台を往けば(略)」

(おまけ)ダブルメガネも実在した?

大正時代の眼鏡|玉水屋電子博物館|メガネの玉水屋

複式アルバイト金属枠眼鏡-〔1920年大正9年)頃〕

 下の図は、この眼鏡の前枠部分をはねあげた時の状態です。前枠と後枠にレンズを入れることによって、遠近両用眼鏡にすることができました。

というわけで、ダブルメガネは実在したわけであります!! 原稿書きあげたあとに気づいたのはナイショな

眼鏡時空で会いましょう

というわけで、今回調査で判明した点を加筆したものを、6/21(土)開催予定の眼鏡時空で頒布する予定です。皆さんも是非明治大正の眼鏡ブームに思いを馳せましょう! 蒲田で僕と握手!!

*1:実際のところはこちらを参照

*2:時系列順に流行った奇態をまとめており、この章の前後は明治20年頃の奇態をまとめてあります